子どもに語りつぎたい日本の歳時記

4月 お花見


桜の木に降りてくる田んぼの神様

古来日本では、お花見は農耕に結びついた宗教的儀式でした。いまではお花見といえば桜の木を思いうかべますが、もともと「サクラ」とは「田の神が山から里へ降りてくるときに使うとまり木」という意味を持ち、常緑樹や花の咲く木のことを指していました。それが桜に限定されるようになったのは、桜の花が稲の花に見立てられ、その咲き具合で秋の収穫を占うようになったからだとか。人々は、桜の木に降りてきた田の神を料理や酒でもてなし、秋の豊作を祈ったのでした。

さらに時代がたつと、お花見は華やかな宴として人々に楽しまれるようになりました。中でも豊臣秀吉が行った「醍醐の花見」は有名で、京都の醍醐寺の桜をいたく気に入ったことから、荒れていた建物を建て直し、周囲の地方から集めた何百本という桜を移植して豪華絢爛な花見を楽しんだといいます。

江戸時代になると庶民にも行楽として楽しまれるようになり、上野、小金井、隅田川堤などは花見の名所として町人たちに親しまれるようになりました。

桜前線ってなに?

国土が南北に長い日本では、地方によって開花が3ヵ月以上も違うといわれています。この時期になるとテレビの天気予報などでは地図を指しながら「桜前線」について説明していますが、これは日本で桜の品種のひとつ「ソメイヨシノ」が咲き出す日付を地図上に記入し、開花日の等しい地点を結んだ線のことを指します。これが各地方の春の訪れを知る目安となるわけです。

参考文献

  • 「日本の年中行事百科 春」岩井宏實監修(河出書房新社)
  • 「子どもに伝えたい年中行事・記念日」萌文書林編集部編(萌文書林)
  • 「ぎょうじのゆらい」山嵜泰正監修(講談社)