その6 「ドンク仁瓶利夫と考える Bon Pain への道」 全国発売開始!

2014-07-20

やっと出来ました、渾身の1冊。 日本のフランスパンの第一人者、ドンク仁瓶利夫さんが一緒に考えていこうと伴走してくれる「よいパン作りへの道」という著作です。

中身は、フランスパンというものを焼く人には、ぜひ読んでいただきたい上級編の内容です。

 

祝 ボンパン 基本 CMYK

 

ときは20年以上前にさかのぼります。

「仁瓶さんのフランスパン作りはすっげー」といううわさをいくつも聞いたのです。ならばと、インタビューに行ったりエッセイの執筆をお願いしたりしているうちに、私の頭に浮かんだのが「仁瓶利夫の厳しいフランスパンづくり」というタイトルの本でした。

さすがにこのタイトルでの実現はかないませんでしたが、ドンクの神戸本社まで旭屋出版の永瀬副社長と一緒にお願いにあがり、ド緊張のなかでできたのが2001年発行の「フランスパン、世界のパン 本格製パン技術」。これはその後も版を重ね続け、現在もフランスパンの教科書として日本中のベーカーたちが使ってくれています。「ぼろぼろになってもう3冊目を買いました」という人にも会いました。

今回の本は、技術は60年前に日本に本格的なフランスパンを伝えたレイモン・カルヴェル教授の基本にのっとり、しかし、時代とともに材料が変わったり誤解が生じてきたところもあるということで、今一度、日本全国のフランスパンの作り手に語りかけるつもりで仁瓶さんはペンを執りました。

著者の仁瓶さんの思いは技術だけにとどまりません。長年フランスと日本と両方の文化に触れながら、「その国の文化は敬意を持って尊重するべき」との信念から、フランスの歴史的な著作を徹底的にあたり、専門家を何度も直接たずねたり、メールしたりして質問攻めにし、自分の言葉にきちんと置き換えられることを選んで、文化的背景、歴史も、書き表しました。

仁瓶さんが言いたいことは本当は、もっともっととんがっていて、たくさんありました。しかし、時間や紙幅、法律などに阻まれ断念いただいたことは、今も私の中で発酵し続けています。

制作には、話があってから2年半のときがかかっています。撮影と原稿はリンクするようなしないような進行の状況で、目次、つまり本としての全体像はどうにも決まらないまま2年のときがたち、苦しんだ結果、これだ! と目次つまり全体構成が出来たのは今年の3月のことでした。それから、原稿と写真を組み合わせてモザイクのように、けれど、あとからみると、それはさも、最初からストーリーがあったかのように、歴史、製法、原材料、トラブルシューティングとうまくまとまっています(なんちゃって・・・)。

それは、あたかも家を建てることは決まっているけれど、部屋数も決めていないなかで、今日はブロック10個と素材違いの柱2本、次の時はどこの天井か壁かわからない紙が20メートル、次にまた、短めの柱1本と・・・受け取っていくようなもの。その混乱は、しばらくの間、私の脳みそと心を沸騰させました。

また、クリームホワイトのパン生地がいくつも仕込まれる製作過程は、素人の私たち編集サイドの人間にはなかなか見分けが難しいものがあります。そんななか、タイミングを逃さずぴたりと最高の瞬間を画面に収めてくださったのは、スタジオ・ワイのベテランカメラマン山本明義さんと軽快にアシストを務める鈴木友樹さんです。撮った写真は1万枚を数えるのではないかと思います。(選ぶ作業はたいへんでした)

一方、デザイン作業も、通常なら基本フォーマットを決めたら後はさらさらと流し込んで・・・となるものが、そうは行かない今回の仕事。デザイン会社コーズの高才弘さんは、何回も何回も、こつこつと赤字を打ち込んでは校正。この作業が技術のページについては初校、再校、三校、念校、最終校、その1、その2・・・あたりから、もう笑いながら付き合ってくださいました。

私のつたない進行で発行もじりじりとずれてしまいましたが、このエネルギーあふれる夏に、これだけの本を世に放つことが出来たのは、最高の幸せであり、今では目の前の目標を失って、ちょっと寂しくもあり、です。

仁瓶さんは、これからこのテキストを片手に各地でセミナーを開催されることでしょう。そして、そこでは書ききれなかったことが生トークでたっぷり聞けるはずです。

ちなみに、私はこの本の制作途中で、著者の仁瓶さんから一対一で直接バゲットとパン・リュスティックをご指南いただくチャンスに恵まれました。今日まで内緒にしていた秘蔵写真もここで公開。仁瓶さんには、本当にたくさんの宝物をいただきました。仁瓶さん、そしてチャンスを作ってくださったドンクの佐藤さん、一緒に労苦を共にした製作スタッフの面々、自由に任せてくださった旭屋出版の永瀬副社長、ありがとうございました!

気合いを入れて作った本です、ぜひ、みなさん、気合いを入れて読んでくださいませ。

松成 容子


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_MG_5278 制作スタッフと、バンザイ

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